避難施設を解説【廊下の幅員・直通階段・歩行距離・重複距離・屋外通路】
こんにちは、でぶリーマンです。
建築基準法令等の法規は建築物に関する最低基準を定めたもので、法令違反となる計画は大きな減点の対象となるようです。
大手資格学校では法令違反の計画は即ランクⅣと判定されます。法令遵守なくして一級建築士試験に合格なし、と言えるくらい法令遵守は大事なことと習います。
今回は建築基準法令のうちの「避難施設」について勉強したことを記していきます。
避難施設
廊下の幅員・避難階段・歩行距離・重複距離・屋外通路などをまとめて避難施設と呼びます。
廊下の幅員
まず廊下の幅員制限が適用される建築物を確認します。
- 建築基準法別表1 (い)欄(一)項〜(四)項の特殊建築物
- 階数が3以上
- 採光上の無窓居室がある建築物
- 延べ面積>1,000m2

設計製図試験では延床面積が1,000m2を超える面積指定になっているので、「廊下の幅員制限が適用される建築物」に該当します。
参考までに・・・
(い)欄(一)項〜(四)項の特殊建築物を確認しておきますと、
廊下は以下の幅員以上確保しなければいけません。
| 廊下の用途 | 両側居室 | 片側居室 |
|---|---|---|
| 小・中学校、義務教育学校 中学校の児童用、生徒用 | 2.3m以上 | 1.8m以上 |
| 病院の患者用 共同住宅(住戸・住室>100m2) その他地上階の居室>200m2・地階>100m2 | 1.6m以上 | 1.2m以上 |
| 法令 | 廊下有効幅員 |
|---|---|
| バリアフリー法(円滑化基準) | 1.2m以上 (50m以内ごとに車椅子の転回スペースを設ける) |
| バリアフリー法(円滑化誘導基準) | 1.8m以上 (50m以内ごとに車椅子のすれ違いスペースがある場合は1.4m以上) |

廊下の芯寸法ではなく有効幅員です。柱や壁厚を除いた有効の廊下幅員ですのでご注意ください。
階段は壁から10cmまでは無いものとみなせますが、廊下の有効幅員には手すりの出幅の緩和はありません。
参考までに・・・
車椅子の転回スペースとしては、内法で最低140cm必要になります。
記述対策にも使える可能性がありますので、車椅子の基本的な寸法を抑えておくと良いかもしれません。
| 80cm | 車椅子で通過できる寸法 |
| 90cm | 車椅子で通過しやすい寸法 通路を車椅子で通行できる寸法 |
| 120cm | 通路を車椅子で通行しやすい寸法 人が横向きになれば車椅子使用者とすれ違える寸法 杖使用者同士が通過できる寸法 |
| 140cm | 車椅子使用者が転回(180度方向転換)できる寸法 杖使用者どうしが円滑に上下できる階段幅の寸法 |
| 150cm | 車椅子使用者が回転できる寸法 人と車椅子使用者がすれ違える寸法 |
| 180cm | 車椅子使用者が回転しやすい寸法 車椅子使用者同士がすれ違える寸法 |

50mごとに140cmの転回スペースがあれば、廊下幅員は1.4mでOK♪
国交相のHPに図解がありますので、併せてご確認くださいませ。
直通階段・歩行距離
まずは用語の定義から。
▪️直通階段・・・任意の階から階段室のみを通って避難階に到達する階段
▪️避難階・・・直接地上へ通ずる出入口のある階のこと
▪️直通階段の設置・・・避難を考慮して居室の各部分から一定の距離内に直通階段を設けなければならないことを規定したもの
▪️歩行距離・・・居室の一番奥から最も近い直通階段までの距離をいう。居室の一番奥から出入口、廊下等を経て、直通階段の出入口に至る、実際に歩く経路を測る。
歩行距離は建築物の用途によって異なり、以下にまとめます。(14階以下の建築物の場合)
| 居室の種類 | 法別表1(い)蘭(四)項 準不燃以上の内装 | 法別表1(い)蘭(四)項 その他の内装 | 法別表1(い)蘭(二)項 準不燃以上の内装 | 法別表1(い)蘭(二)項 その他の内装 |
| 歩行距離の限度 | 40m | 30m | 60m | 50m |
採光無窓居室の場合、歩行距離の限度が厳しく制限されるので注意が必要です。

有効採光面積の合計が、居室の床面積の1/20未満なら無窓居室に該当します。
| 居室の種類 | 採光無窓居室 準不燃以上の内装 | 採光無窓居室 その他の内装 |
| 歩行距離の限度 | 40m | 30m |
図面に「準不燃材料」のように補足する必要はないようですが、記述で歩行距離のことを求められた場合は「準不燃材料の内装仕上げを採用し、歩行距離は40mとした」と表記できるようにしましょう。(※別表1(い)欄(二)項の用途は60m以下)
2以上の直通階段の設置|施行令121条
建築物の避難階以外の階がいずれかに該当する場合は、その階から避難階または地上に通ずる2以上の直通階段を設けなければいけない。
| 代表的な区分 | 適用条件 | ||
|---|---|---|---|
| 特殊建築物 | 集会場・劇場・物品販売業の店舗 | 原則全て | 床面積の合計が1500m2を超えるもの |
| 特殊建築物 | キャバレー・バー | 原則全て | |
| 特殊建築物 | 病院・診療所・老人ホーム | >100m2 | 基準階における居室の床面積の合計(病室・宿泊室・寝室) |
| 特殊建築物 | ホテル・共同住宅・寄宿舎 | >200m2 | 基準階における居室の床面積の合計(病室・宿泊室・寝室) |
| その他 | 6階以上の階 | 原則全て | |
| その他 | 5階〜3階(避難階が1階の場合) | >200m2 | 基準階における居室の床面積の合計(病室・宿泊室・寝室) |
| その他 | 2階(避難階の直上階) | >400m2 | 基準階における居室の床面積の合計(病室・宿泊室・寝室) |

資格学校では、2以上の階段を設置して2方向避難を確保すること、と教えられています。
重複距離|施行令121条3項
施行令121条3項に
「重複区間があるときにおける当該重複区間の長さは、歩行距離の数値の1/2を超えてはならない。」
という規定があります。
無窓居室であれば、仕上材に準不燃材料を使用した場合で歩行距離が40m、重複距離は20mを超えてはいけません。
もし重複距離が歩行距離の1/2を超えてしまう場合は、屋外階段を設置する必要があります。

屋外階段は1.5m以上必要となりますので、1m以上の部分は建蔽率の対象となります。
建蔽率オーバーに注意が必要です。(審査員はきちんと算定しているようです)
避難階段の構造
避難階段に通ずる出入口には常時閉鎖または煙感知器機連動の遮煙性能のある防火設備を設け、避難方向に開くこと。
避難階段は耐火構造とし、屋内階段においては避難階、屋外避難階段においては地上まで直通すること。
非常用の進入口
建築基準法では、建築物の高さ31m以下の部分にある3階以上の階には、火災時などの非常用進入口の設置が義務付けられています。
進入口は、道または道に通ずる幅員4m以上の通路その他の空地に面する各階の外壁面に設け、進入口の間隔は40m以下とします。
製図試験では、代替進入口として計画すると作図時間が短縮できるのでオススメです。
非常用の進入口が必要な外壁面に、窓等の開口部が外壁面の長さ10m以内ごとに設けられている場合、この窓は代替進入口となります。
- 直径1mの円が内接する大きさ以上
- 幅75cm以上、高さ120cm以上
- 格子等があってはNG※出入りができなくなる!

こちらの記事が分かりやすかったです。
敷地内通路
敷地内通路は幅員1.5m以上確保しなければいけません。
